青いバッグを買わなかった理由

2か月くらい前、青いバッグが私の生活に入り込んできた。

ニュースサイトを開くと出てくる。SNSを見ても出てくる。また出てくる。青いバッグ。

あとから思い出したのだけれど、最初に見たのはFacebook広告だった。そこで一度クリックして、ECサイトを少し眺めた。しばらく見て閉じた。それだけだったはずなのに、そのあとしばらく、パソコンの画面を開くたびに、あの青いバッグが何度も現れるようになった。

ニュースサイトでも出てくる。SNSでも出てくる。
広告のターゲティングは、私のことをよく知っている。

私は青が好きだ。ここ数年、気づけば身の回りに青が増えている。服のどこかにブルー。ノートもブルー。スニーカーにも青のワンポイント。

そのバッグは本革で落ち着いた青。パソコンも入るサイズで、仕事にも使えそうだし、ちょっとした外出にもよさそうだった。

「わ、いいな」

そう思ってECサイトを眺めた。するとその日から広告が追いかけてくる。青いバッグが。そして正直に言うと、私はもう一度見に行った。さらにもう一度。

ここでふと思う。あ、これ、資本主義の網だ。完全に捕まっている。

最近の私は、無闇に物を買わない。だから、用もないのに通販サイトを眺めたりはしない。なのに、それでも人は揺らぐ。「いいな」「欲しいな」という気持ちは、ちゃんと出てくる。

そこで自分に聞いてみた。「このバッグ、いつ使う?」

自分の生活を思い浮かべてみる。ジムにはだいたい手ぶらで行く。持っていくのはパワーグリップとペットボトル。それを小さな袋に入れて手で持って歩く。近所のスーパーに行くときも、財布はポケット。エコバッグもポケット。ほぼ手ぶら。

バッグが必要な日は、Taroがプレゼントしてくれた黒革のショルダーバッグを使う。自転車で荷物がある日は、洗える黒いリュックVEIL。つまり、もう足りている。

冷静に考えると、私の生活はそのふたつで完全に回っている。そう思った瞬間、さっきまでのソワソワが少し静かになる。

私は知っている。買う前がいちばん楽しい。「これを持つ私」を想像している時間がいちばんワクワクする。でも、買った瞬間にその熱はすっと消える。経験的に、もうわかっている。

そして思い出した。そういえば、母からもらったバッグがあった。青と白の配色の本革バッグ。とても素敵なもの。でも、それもほとんど使っていない。理由は単純で、私の生活がほぼ手ぶらまたはリュックで事足りるから。

新しいものが欲しくなるとき、人は「物」を見ている。でも、本当は「自分の生活」を見たほうがいい。これを買ったら、いつ使う? 1週間に何回使う? 何に使う? そこまで考えると、案外こう思う。

あれ、いらないな。むしろ、もう持ってる。

資本主義は、私たちに買わせようとする。私たちの好みを学び、ぴったりのものを差し出してくる。でもその網に絡め取られそうになったときは、自問自答する。

「これ、いつ使う?」

それだけで欲望は少し静かになります。
そして多くの場合、こう思うのです。

もう、足りていた。

Text / 池田園子

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