「京都に、おすすめの手土産はありますか?」
そう聞かれたとき、私は好きな和菓子店の名前をいくつか挙げたあと、もうひとつの選択肢として、羊羹で有名なお店の名前を出しました。「あの店、ちょうど通り道にもありますし」と。その方と一緒に立ち寄ってみると、季節限定のものや京都だけで買えるものが並んでいて、「これは他の地域の方には喜ばれますね」と、売り場の前でしばらく盛り上がったのです。もともと羊羹は好きでしたが、その日を境に、「手土産にするなら羊羹、いいな」と思うようになりました。
そして私は、ひとつ気づいたのです。羊羹というお菓子は、実はかなり優秀なのではないか、と。
まず前提として、普通においしい。お茶に合うのはもちろんですが、コーヒーにも合うし、人によってはお酒にも合う。つまり、出す相手をあまり選ばない。これは、手土産として重要な要素。
さらにサイズがいい。小さくて、かさばらない。バッグの中に入れても邪魔にならないのに、手に取るとずっしりと重い。このずっしり感が、実はとても大事だと思っています。軽いものより、「しっかりしたものをもらった」という満足感があるような気がするのです。
しかも最近の羊羹は、見た目も楽しい。かわいいパッケージや季節限定の味、少し洋風のものまであって、選んでいる時間までちょっとした娯楽になります。たまたま立ち寄った「都松庵」(堀川三条)で、りんご味やチョコ味の羊羹を見つけたときには、思わず「そんなのあるんだ」と、何本も買ってしまいました。だいたい一本300〜400円くらい。気軽に買える値段なのもありがたいところです。
そして、羊羹の最大の強みは日持ちです。長いものだと一年以上もつ。これは手土産としてはかなりの安心材料です。「今日中に食べてください」というプレッシャーを相手に与えない。贈る側としても、渡すタイミングをそれほど神経質に考えなくていいのが助かります。
さらに脂質がほとんどないというのも、素晴らしいポイントだと思っています。甘いお菓子ですから糖質はありますが、罪悪感を抱きにくい。こういう小さな安心感も大事。

そんな理由もあって、先日、東京から来た方にお会いしたとき、私は羊羹をいくつか選び、京都のコーヒー店のドリップバッグとセットにしてお渡ししました。長く滞在される予定だったので、ちょっと疲れたときにコーヒーを淹れて、羊羹をひとつ食べてもらえたらいいなと思ったのです。ほんのささやかな組み合わせですが、我ながら、なかなか良い贈り物になった気がしています。
手土産というのは、豪華である必要はありません。むしろ「気を使わせずに、でも、たしかにうれしい」。そのくらいの感覚が、いちばん心地いいのではないかと思います。
その点で、羊羹はかなり優秀です。小さくて、日持ちがして、持ち運びやすくて、そして、おいしい。気軽なのに、どこかよそ行き感もある。
だから最近、私はちょっとした手土産に迷ったら、まず羊羹を思い出すようになりました。きっと、これからも。
Text / 池田園子
【関連本】『和菓子のいのち』
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