
『ブルーボーイ事件』を観てきました。本作は1960年代に起きた性別適合手術の違法性をめぐる裁判を題材にした作品です。当時の社会の偏見や制度の矛盾の中で、女性として生きようとした人々の苦悩と闘いを描いています。特筆すべきは「当事者キャスティング」で、主人公をはじめ主要人物にはトランスジェンダーや性的少数者として生きる俳優が起用されています。
物語は性別適合手術を行った医師が見せしめ的に逮捕されるところから始まります。手術を受けた彼女たちの一部は街頭にセックスワーカーとして立っていました。法律上は「(戸籍上は男性だから)売春しているとはみなせない」という矛盾を抱え、社会は彼女たちを異物として扱い続けていました。弁護士は性別適合手術が必要な医療行為だったことを示す目的で、説得力のある証言者を探すのでした。
そこで見つかったのが主人公のサチです。自分を女性として尊重してくれる男性と共に慎ましく生きていて、「静かに暮らしています」という言葉を繰り返すサチ。その一言は、過去に受けてきた差別や嘲笑、恐怖との訣別を感じさせます。証言を拒む彼女でしたが、証言台に立って傷ついた仲間を見て、自分があの場で話そうと決意します。
クライマックスで、裁判官に「今、幸せですか」と問われたサチは、「幸せです。でも皆さんが考える幸せとは違うかもしれません」と答えます。彼女が自分の本心を守るために重ねてきた闘いの年月を物語るようでした。
最終的には手術は医療行為であり罪ではないと認められますが、性別適合手術が公に行われるようになるのは1998年、判例から25年後のことです。本作は、その長い歴史の一部を丁寧に掘り起こし、あの頃当事者が抱えていた生きづらさ、葛藤しながら生きる強さを鮮やかに映し出していました。
映画っていいなあ、という感想。11月、12月は楽しみにしている作品が次々と公開されるので、しばらく週1〜での映画館通いが続きそうです。
Text / 池田園子
【関連本】『ブルーボーイ事件』
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