上辺ではない「その人が欲しい言葉」を届けるということ

帰省したとき、久しぶりに母と話す機会があり、改めて気づいたことがあります。母は、好かれる人にはべらぼうに好かれる人。逆も然り。良い意味でクセが強いのです。

なぜ、ものすごく好かれるのか。その理由について考えてみたとき、ひとつの答えにたどり着きました。

それは「人が言われてうれしい言葉を、その人に合わせて届けている」ということです。

言われてうれしい言葉というのは、その人が自信を持っている部分であり、大事にしている価値観であり、他人から認めてもらいたいと思っているポイントでもある。母は、相手が何を言われたらうれしいかを自然と察して、その言葉を贈ることができる人なのです。

分かりやすい例でいうと、世代に関係なく女性としての魅力を褒められたい人に対しては、「今日もきれい」「あなたの魅力はみんなも感じている」などと率直に伝えます。

(背景を伝えておくと、母は社交ダンスの講師をしていて、社交ダンスといえば中高年、とくに高齢の生徒さんが多いです。そのなかには美意識が高く、自身の女性性に自信を持っている方もいるため、各々の性質を見極めた上で、そういった直接的な言葉もお伝えするようです)

相手が何を言われたらうれしいかを想像しながら生きること。これは人付き合いにおいて大切な姿勢のひとつです。

もちろん、それには観察力が必要。しかし、もし観察が得意でなくても、相手の話す内容や頻度からヒントを得ることができます。「この話題が多いな」「これについては毎回言っているな」と気づくことで、その人が大切にしていることが見えてくるのです。

人と関わるなら、気持ちよくやりとりしたいし、敵をつくるよりも味方を増やしたいと私は思います。相手にとって気持ちのいい言葉を贈ることは、それだけで立派なギフトになります。言葉ひとつで相手が笑顔になり、ご機嫌になって、物事がうまく回っていくなら、それほど最高なことはありません。

私自身も「この人はこう言われたらうれしいだろうな」とか「この場面ではこの言葉を忘れてはいけないな」と意識することがあります。特に、関係性が深い相手ほど、そのポイントを抑えるように心がけています。

自分の肩書や学歴に誇りを持っている人には、その部分を尊重する言葉を選びます。ブランドものやセンスに特徴のある人には、そのこだわりを認めるような言葉をかけます。

これらはお世辞ではなく、相手が「確実に力を入れていること」。だからこそ、上辺の褒めとも違うと認識しています。まあ、関係が円滑になるなら、上っ面の褒めもできなくはないのですが、そうではなく「相手が欲しい言葉」をかけたいと思うものです。

とはいっても、母ほど人の心を掴む技術にはまだ至っていません。それでも、母の娘である私ですから、そういったスキルは多少遺伝しているような気もします。

言葉を贈ることの大切さ、人との付き合いにおける観察と敬意の意味を、これからも大事にしていきたいと思います。

Text / 池田園子

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