1週間に1〜2回は立ち寄るドラッグストアがある。
基本的には食材を買う。納豆や卵、果物。その日食べるもの。
レジで対応してくれるのは、だいたいいつも同じ店員さんだ。
たぶんもう10回以上、同じ人と同じやりとりをしている。
「ポイントカードはお持ちですか?」
「ないです」
「◯◯ポイントカードか、◯カードはございますか?」
「ないです」
「アプリのカードはお持ちですか?」
「ないです」

毎回レジの前で考えるのは、このやりとりをもっとも端的に、できるだけ角を立てずに終わらせる方法だ。
「ポイントカードも◯◯ポイントカードも◯カードもアプリも持っていません。つくる予定もありません」
最初にまとめて言ってしまえば早い気もする。
でも、それを一息で言うのは少し疲れるし、最初のやりとりにしては尺が長い気もする。
後ろに並んでいる人を、ほんの一瞬でも待たせてしまうような気がして、結局、いつもの短いやりとりを選んでしまう。
ポイントに興味がないからつくらない。
カードやアプリを増やしたくないからつくらない。
この理由は、たぶん伝えようがない。
店員さんの立場も、わからなくはない。
聞かれなかったことに腹を立てる人もいるだろうし、店側の事情もあるのだと思う。
顔も覚えているし、よく来る客だということも、きっと認識されているはずだ。
だから「カードはつくらない人」だと、そろそろわかってほしい気持ちもある。
それでも、これはマニュアルの会話なのだと自分に言い聞かせる。
誰も悪くない。数秒で終わる、どうでもいいやりとりだ。
それでも私は、レジに立つたびに少しだけ考えてしまう。
どう答えるのが、一番シンプルなのか。
結局、今日も同じように断って、同じように会話を終える。
ポイントカードもアプリも増えない。
こういう考えごとを挟まないと、納豆も卵も持ち帰れない。
面倒だけれど、どうやらそれも生活の一部らしい。
Text / 池田園子
【関連本】『生活史の方法』
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