誰も彼もが何かを売ろうとしている。企業は新しい商品・サービスをつくり、広告を打ち、SNSにはレビューやおすすめが流れ、ランキングが並び、インフルエンサーが「これいいですよ」と紹介する。あちこちから声が飛んでくる。
私はそれを、以前書いた言葉で言えば「資本主義の網」だと思っている。気を抜くと、その網は静かに近づいてきて、気づかないうちにこちらの「欲しい」という気持ちをつくり出し、必要でもない物を買うことになる。
もちろん、誰もが自分の商売でお金を稼がなければならないし、経済が回るためには物が売れる必要もある。それは分かっている。ただ、それにしても世の中にはすでに物がありすぎるし、つくりすぎではないかとも思う。もう十分あるはずなのに、さらに買わせようとする力が強すぎる。だから私は、その手のおすすめには基本的に乗らない。ただし、例外がひとりだけいる。
友人であり仕事仲間でもある、矢野麻子さんである。先日、彼女が音声配信で電動ミニクリーマーの話をしていた。百均で300円で買ったそれが、とても重宝しているという。カフェで出てくるようなふわふわのミルクフォームのラテを家でつくれる。抹茶ラテも、ほうじ茶ラテもできるらしい。
その話を聞いて、私は興味を持った。というのも、カフェでラテ系を頼むとだいたい700円前後、店によってはもっとする。たまに飲む分にはいいけれど、日常の飲み物としては少し気軽とは言いがたい金額である。もしそれを家で簡単につくれるのなら、私にとってはむしろ必要な道具だと思った。
百均に行くが、これがなかなか見つからない。1軒目、なし。2軒目、なし。3軒目に行ったセリアでようやく見つけた。しかも値段は100円。麻子さんは300円と言っていたが、店やメーカーによって違うらしい。単四電池も一緒に買い、翌日さっそく試してみた。

初めてつくったとき
豆乳を50〜100mlほどカップに入れ、電子レンジで40秒ほど、じんわり温める。それをクリーマーで数十秒かき混ぜると、みるみる泡が立つ。しかもその泡が見事で、どう見ても手動では不可能な細かさ。それをホットコーヒーの上にのせると、見た目も味もほとんどカフェ。家でこんなものができるのか、と驚いた。もっと早く導入すればよかったと思うほど。
コストも優秀で、本体110円、電池を入れても初期費用は220円ほど。すでに数回使っているので、もう元を取ったような気持ちになっている。コーヒーを合わせても一杯あたり数十円程度。700円のラテとは、もはや別の世界である。

後日、点てた抹茶に乗せて、抹茶ラテに
私はこうして、麻子さんの影響で買った物を「麻子買い」と呼び、本人にも報告している。広告でもランキングでもない。信頼しているひとりの生活者が「これはいいよ」と言っていたから試してみる。そのくらいの距離感で買う物のことである。
世の中には無数の情報が流れている。広告もレビューもランキングも、毎日新しいものが現れる。しかし、全部を相手にしていたら生活が持たない。大事なのは情報を遮断することではなく、情報源を選ぶことなのだと思う。
この人の言うことは信頼できる。この人が長く使っていて本当にいいと言っている。それくらいの距離にいる人の言葉には耳を傾けてみる価値がある。私にとって、その代表例が麻子さんなのである。
今日もまた、ふわふわの豆乳ラテを飲みながら、これはなかなか良い「麻子買い」だったなと満足している。
Text / 池田園子
【関連本】『[禅的]持たない生き方』
「SAVOR LIFE」では、生活をより豊かにするためのアイデアや情報を発信しています。会員様限定のお知らせや限定コンテンツをニュースレターでお届けします。ご登録ください!


