自信で走って、後悔して、神に出会った

自転車での移動が、ちょうどいい季節になってきました。京都に住んで約一年。四季をひと通り過ごしてみて、この「ちょうどよさ」がどれだけ貴重か、身にしみてわかります。夏は言うまでもなく過酷で、ほんの数十分外に出ただけで体力を持っていかれるし、冬は冬で底から冷えてくる。ただ、それでも日が差しているだけで「今日はけっこういける」と思えてしまうあたり、完全に京都に調教されてきた気もしています。

私は、できる限りバスに乗らないようにしています。理由はシンプルで、混んでいるし、ゆっくりだから。安くて便利なのは間違いないのだけど、あの時間にじわじわ削られていく感じがどうにも苦手です。その代わりに選んでいるのが、歩くか、自転車か。この選択のおかげで、京都という街を平面ではなく、立体で把握できるようになってきました。

先日、自宅から京阪七条まで往復15kmほど、自転車で移動しました。電動でもない普通の自転車で、無理に飛ばすわけでもなく、信号に捕まりながら、片道だいたい50分。この時間が、思っていた以上にいい。ただ前だけを見て、淡々と進むしかない。強制的にディスプレイから引き剥がされるこの時間は、健全以外の何者でもないなあと。

行きは、Googleマップの推奨ルートではなかったのですが、堀川通に出て、そのまま南下し、堀川七条から七条通を東へ向かうルートを選びました。「こっちのほうがいいでしょうに」と、なぜか謎の自信で(家を出る前にストリートビューで、一部エリアを確認していたのだけれども)。ところが、この七条通がなかなかの曲者で、途中から急に道が狭くなる。車道の自転車レーンは申し訳程度、歩道も気軽に走れる雰囲気ではない。ああ、これだ。人が地図を頼る理由、そのとき、完全に理解しました。数分前の自分に言ってあげたい。「その自信、どこから来た?」と。

そこで帰り道。もう七条通は無理。ということで、ルートを組み直しました。河原町通を北上して、五条通へ抜ける。この選択が、完璧でした。五条通には歩道の隣に自転車道が整備されていて、幅も広く、流れもいい。走っていて、まったくストレスがない。そのまま堀川通まで出てしまえば、あとはもう安心コースです。結果、「京都の東西移動は五条通を使う」という、自分なりの正解を手に入れました。

自転車で走ると、通りごとの性格の違いがくっきり見えてきます。四条通や河原町通の一部(御池通〜仏光寺通)のように、多くの時間帯で自転車が通れない場所もあれば、五条通のように「どうぞ走ってください」と言わんばかりに整えられている道もある。こういう前提を知っているかどうかで、移動の快適さは驚くほど変わります。

だからもし、京都に来て自転車に乗る人がいたら。目的地だけでなく、「どの通りを通るか」まで設計してみてほしいのです。少し遠回りでも、走りやすい道を選ぶだけで、移動はただの消耗から、心地よい時間に変わる。今回の往復15kmは、軽い有酸素運動というより、「ルートを外した人間の学び」と、五条通という、もはや神通りに救われた記録でした。

Text / 池田園子

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