「高齢紳士の慎ましくも豊かなひとり暮らし」本づくり計画、再開

「高齢のご婦人の慎ましくも豊かなひとり暮らし」をテーマにしたエッセイ本が多い——。

先日お会いした年上女性にそんな話をしたら「そうなの!?」とおっしゃっていました。

書店で足を留めるコーナーも、本をチェックする頻度も、スコトーマ(心理的盲点)も人それぞれですから、そんな傾向があるのを知らなくて当然です。

私は先輩女性たちの生き方に興味があるので、女性ライフスタイル本コーナーにはよく足を運びます。

数年前からタイトルが『年齢+生き方や考え方に関するキャッチコピー』で構成された本がやたら増えたな、という感想を持っていました。

最近は『財布は軽く、暮らしはシンプル。74歳、心はいつもエレガンス』(小笠原洋子)を読みました。

長く大切に着ている少ない洋服(中には50年近く持っているモノも)の着回しアイデア、アクセサリーを部屋のインテリアアイテム化、お金を使わない工夫など、エッセンスとして取り入れたいことが多く書かれています。

旧知である扶桑社の編集者・小野麻衣子さんが編集担当を務めた1冊。写真も素敵です。

それにしても、と私は1年前に考えていました。「高齢紳士の慎ましくも豊かなひとり暮らし」本がこの世にないなあと。

麻衣子さんにも「どうですか? いい著者候補います」的な話をして、「面白いですね」と言っていただいた記憶があるような、ないような。

福岡にいたときに出会い仲良くなった高齢紳士が、精神的に豊かなひとり暮らしをしていて、生活の話を聞けば聞くほど「本にしたい」と一方的に思うようになっていました。

本人にもちらっと「あなたの本を作りたい」と言いましたが、「俺はそんなに目立ちたくないよ(笑)」と返ってきた記憶があります。

その後、ほかに夢中になることが次々にできて、すっかり忘れていましたが、先日冒頭の話をしたのを機に再び思い出したのでした。

そして、出版社を通して本を作るのは難しくても、今個人プロジェクトとして進めているKindle+ペーパーバックで出せばいいではないか、という考えになっています。

既存本が存在しない=大きなニーズがない、と出版社が判断している可能性は大ですから、手を出さないのも当たり前です。

一方で、個人プロジェクトなら、とてもニッチな本であっても、出せる限りのコンパクトな予算でKindle+ペーパーバックで自由に出せます。

私は出版社と仕事をすることもあるので、「これだと商業出版は無理だろう」というのは大体わかりますし、企画が通る厳しさも知っています。

小金はあるのだから、自分が欲しい本は自分で作ればいいじゃない、と思うようになりました。こういう考えは仕事ではなく、趣味になってしまうのでしょうけれど。

7月に福岡へ行くので、またその高齢紳士を口説こうと思います。同時に、候補者となりそうな方を探す行動に出るつもりです。

楽しくなってきました。

Text / Sonoko Ikeda