カレー恋しや夏、スパイス女の末路 #思い出というケアギフト

毎年、夏になると増えるのが、カレーのまとめ特集。テレビや雑誌のヴィジュアル、友人の投稿を目で楽しみ、想像の中でカレーの旅をしています。スイーツ情報よりカレーの多様性を眺めている方がずっと好きな私です。

インドカレー、スリランカカレー、タイカレーなど、アジアそれぞれの国の専門料理店のカレー。国の違いだけでないカレーの枠組みも多く「どこで食べるか」とすれば居酒屋カレー、喫茶店カレー、ホテルカレー、日本だけでも全国地域別の名物カレーなどがまとめられています。
ここまで多様化していると、あなたにとってのカレーと、私にとってのカレー、そのどちらも正しいけれど、お互いが馴染みあるものは”別物”の可能性も濃厚です。

「ビリヤニ」や「ミールス」も、以前はインド亜大陸の食に詳しい人が好んで食べていた印象だったのに、調理キットやレシピも増えて家庭の話題に馴染んできたと見え、厳密にはそうではありませんが私の頭の中では「カレーの国の料理」と換算している気がします。

日本の家庭ごとのカレーも、もはやその多様性の一派。私の夏の思い出も、実家のカレーの話抜きには語れません。

平成初期の我が家のカレーを振り返る思いは6月の父の日から引きずっていました。
我が家はずばり、絵に描いたように「カレー=パパ」という思い出でした。母に「今日カレーにするね(普通のルウの)」と言われたら、小中学生の私は瞬時に「(私より)パパが喜ぶね」と反応していました。

見慣れた絵文字の形にあるご飯とカレーが半分ずつの「カレーライス」ですが、今のようにカルディなどの食材店で異国のスパイスや調味料に目が慣れてしまうと、意外とご無沙汰なのがこのタイプ。
私の生活からはすっかり遠ざかっていた存在で、給食や病院食の献立メニューに「カレーライス」を見たら懐かしくなるほどでした。

社会人になって家を離れるとともに、父と一緒に食事をとらなくなり、その頃、糖質制限ブームもあって、父自身ライスや脂質たっぷりのカレーを控えるようになり、カレーを食べに行く頻度も自然減少。幼心のシンボルだったパパ=カレーの構図も徐々に頭からフェードアウトしていきました。

現在、私から季節養生の話題によく登場するカレーのスパイス、ハーブの効能などの情報に父は「?」という様子。父のみならず、日本人全体で意外と知られざる事実かもしれません。

誰かとカレーの話になる度、私がカレーをすっ飛ばして多種多様なアジアのスパイスやハーブに話を広げていくので、人によってはインプット過多になってしまうかもしれません。

先日も20代くらいの働き女性に「カレー粉を構成する一つひとつに体に効く要素が入ってるんですよ(唐辛子以外の名前を具体的に挙げて)」と言うと「全然知らなかったです!」と目を輝かせて返答してくれました。今日はその続きの深いワケ。

そもそもスパイスの何がいいんでしょうか。私がスパイスについて話す度「市販や外食のカレーなら普通に食べるよ」という人にも、「何がそんなに体にいいの?」とカジュアルに聞かれます。

アーユルヴェーダに詳しい料理研究家、香取薫さんの本によれば、スパイスの役割はまず香り付け、色付け、辛み付け。さらに薬効、殺菌や防腐、精神的作用。

ターメリック、クミン、コリアンダー、ブラックペッパー、チリパウダー、シナモン、カルダモン、フェンネル、ガラムマサラ(順不同)。つらつらと今思いつく限りを挙げましたが、インド食材店に行けば、みなさんの知らない名前のものもあるかもしれません。同じ名前のスパイスも「ホール」といって種子や根のままの状態とパウダーとを使い分けて料理されている場合があります。

スパイスの買い物に行くと気づくことですが、たいていハーブとセットで買われることが多いため、ハーブまで含めるともっと「薬効」目線での選び方ができます。

インド食材店や上野の「アメ横」が身近な環境で暮らしたことのある私は、身近だったお店を離れた後も通販で愛用し続けてもう10年ほど。野菜と同じ感覚でスパイスやハーブを気軽に買います。

けれども、先ほど羅列したようなスパイスを全部揃えること? まず、ありません。
あるときから「これは今の自分に効きそうだな」というものをピンポイントでかいつまんで買うだけになりました。

スパイスやハーブを多用するお料理は、一般的にご年配の方ほど馴染みがないのかもしれませんが、私自身も使い方は雑。食べ慣れたいつもの料理(たとえば、煮込みやポテトサラダなど)に、適当にシングルスパイスやハーブをぱっぱとかけたり一緒に煮込んだりしているだけ。
こう聞いたら、油でじっくり炒めてパチパチ言わせていちからつくる印象も変わって、料理の肩の荷がおりませんか。

ちなみに、東洋医学の6つの体質の中で「気滞(きたい:イライラ、ストレスが詰まっている人)」の体質には特にカレーを構成するスパイスやハーブの「香り」の効能が効くそう。東洋医学や漢方の本で自分の体質を知れば、セルフケアアイテムとして十分取り入れられるに相応しいものです。

そこで恋しや、父とカレーと平成の夏の思い出。

飛んでインドで、日本の中の料理店で、スパイスを浴びるように食べた経験もありましたが、SAVOR LIFEでも、ニンニクがお腹に合わなくなった「変わる自分」を告白したこの時から徐々にガーリックが混入するものや玉ねぎを摂らなくなり、一時は刺激物全般を避けていました。

特によい薬効で有名な生姜でさえも、夏の自分の体には余計な炎症を起こしているとわかり、それを抜きに生活すると香りの強い「五葷(ごくん)」を抜きにした禅師のお坊さんのような生活です。「刺激物」の筆頭である唐辛子も含めると、まさにカレーに欠かせない構成要素。いつの間にか、れっきとしたカレーを食べる機会もほとんどなくなっていました。

コロナ前後で体が生まれ変わった今の私にとって巷のカレーは強すぎるので、目で楽しむのが趣味になりました。料理としてのカレーではなく、一つひとつスパイスやハーブを自分に合わせにいき、体と生活に馴染ませ、今の私にとっての「カレー」になったのです。

そんな私も旅をすればまた現地肌にあうものを取り入れるでしょうし、日本での暮らしでは引き続きセルフケアアイテムとしてのスパイス付き合いを深めていくでしょう。これからのことはわからないからこそ、変わる自分にわくわくしています。

Text / Anna Koshizuka(ゆる社会活動家/ケアライター

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