合うか、合わないか

ああ、そうだったのか。
店に入った瞬間、「あ」と小さく思った。

この店に来るのは、二回目だった。
最初に来たときは、そんなこと、まったく気づかなかった。早い時間で、店内には私とTaro、そしてもうひとり、男性がいるだけ。誰もタバコを吸っていなかったし、灰皿の存在も、視界に入っていなかった。

今回は、前より少し遅い時間だった。
ドアを開けた瞬間、空気が違った。

「あ、ここ……」

タバコの煙が、もくもくしている。
見渡すと、あちこちでタバコが吸われていた。

その日は予約をしていたわけではないけれど、「今日はここでごはんにしよう」と決めていた。同行者は「あ、私は全然気にならないよ」と言った。

店主は、奥の席を案内してくれた。
でも、そこはさらに煙がたまっている場所だった。

うーん。
少し考えてから、聞いてみる。

「ドアの近くの席にしてもいいかな?」

入り口に近い席に移動して、そこでしばらく食事をした。

コートが臭い。
服も臭い。
髪も臭い。

帰り道、全部がタバコのにおいになっていた。

「あーあ」

心の中で、そう思った。

タバコのにおいは、どうしても苦手だ。
だから、普段は喫煙できるお店には行かない。
そしてきっと、これからも、この店に来ることはないと思う。

料理の感じとか、さっと食べられる気軽さとか、値段のほどよさとか。
そっちに気持ちが向いていて、「喫煙可能」ということを見ていなかった。

でも、ふと思う。
喫煙できるお店が減っている今、この店は、タバコを吸う人にとっては、きっと大切な場所なんだろう。

誰かが悪い、という話でもない。
ただ、合うか、合わないか。
それだけのことだった。

私はまた、禁煙の立ち飲み屋を探す。
きっと、また「あ、ここいいな」と思える場所に出会うために。

こうして、少し遠回りをしながら、
自分にとって「あたり」の店を、少しずつ見つけていくのだと思う。

それは、思っているより、時間がかかる。
でも、その途中も、悪くない。

Text / 池田園子

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