「まあまあいい客」として通いたいお店がある幸せ。

世の中には魅力的な飲食店が数多くありますが、「また行きたい」と心が動くお店は自然と限られてきます。そんななか、「もう一度、いや毎月一度は通いたい」と思い、2度目の訪問をしたお店があります。京都・北野白梅町のイタリアン「イルピアット」です。

最初に訪れたのは9月末でした。紙屋川沿いの落ち着いた立地で、外観も雰囲気もよく、通りかかるたびにいつか行こうと決めていたお店でした。初回の予約を入れ、扉を開けた瞬間、「ここにはいい気が流れている」と直感したのを覚えています。

料理は月替わりで、どれも驚くほど丁寧につくられていて、顔の力が抜けるくらい美味しい。ふたりで5〜6品ほど頼み、私はワインを2杯、Taroは1杯。会計は1万円少しで、価格以上の大きな満足感がありました。オーナーシェフの水谷啓郎さんは「美味しいものをつくる人」の雰囲気をまとい、アルバイトの大学生も気持ちのいい接客。お腹も心も満たされ、店を出たあと「また来よう」と自然に言葉がこぼれるような体験でした。

2回目の来訪を決めた頃、お店のサイトやブログをじっくり読みました。すると、シェフが本を出版し、音声コンテンツを98回も配信している表現者であることを知りました。立て続けに5話ほど聴いてみると、料理人としての思想や店の在り方、世の中の動きを踏まえたうえで自分が提供する価値を考え続ける姿勢が伝わり、料理だけではなく人としての魅力にも惹かれていきました。

「イルピアットで美味しいものを食べ、楽しい時間を過ごしてほしい」という軸を決してぶらさず、そのために料理もサービスも誠実に整え、更新し続けている——そんな覚悟を感じました。

2回目にいただいたもの(一例)

2回目の予約の際には、「ご著書も購入したいです」とメッセージを添えました。予習をして臨んだ2回目の訪問は、初回以上に楽しい時間となりました。自分のお店や表現活動に興味を持ってくれる客を、シェフもきっとうれしく思ってくださったのではないか、と感じられました。

水谷シェフの発信のなかには、「お店の理想や大切にしていることを汲み取り、そこに寄せてくれるお客様は、とてもありがたい」という趣旨の言葉がありました(正確な表現ではなく、私の解釈です)。私自身、お店が好きであればこそ、少しでもそのお店が続いていくような行動を取りたいと考えているので、その考え方に深く共感しました。

私は「まあまあいいお客」でありたいし、自分も気持ちよく通いたい。Taroとふたりで行くときは、アラカルトのレストランでは適度に料理を頼み、適度に飲み、客単価が4,000円以上になるように心がけ、1〜1時間半前後で席を空けるようにしています。

りんごのデザートも美味しい

人は「お店を応援したいから通う」という理由だけでなく、「好きなお店にこれからも生き続けてほしいから通う」という側面も持っているのだと思います。

究極的には、レストランがなくても人は生きていけます。スーパーで食材を買い、家で料理をすればいい。でも、家では再現できない味や料理人の技術、店がつくりだす空気感によって生まれる外食ならではの喜びは、私にとってなくてはならないものです。人生の楽しみのひとつ。だからこそ、時々の贅沢として味わいたいし、その時間を大切にしたいのです。

イルピアットのように、空間そのものが心地よく、シェフの哲学が料理や接客、サービスからも立ち昇るお店に出会えることは、もちろん店と客との相性という化学反応もあり、運や縁も関わっているでしょう。だからこそ、その出会いを大切にしながら、シェフの言う「おいしいは楽しい」が叶う場所として、これからも足を運びたいと思っています。

Text / 池田園子

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