いくつになっても、生活の中に世界を

いくつになっても「世界」に関心を持てることは素晴らしい。

自分もそうでありたい。

ある日、今暮らしている家の近くの道端でお年を召したご婦人3人の会話が聞こえてきて、思わず耳を傾けました。

「プラザでね、世界の童謡やるって」
「あら、どこ?」
「〇〇ホール。」
「いつ。」
「明日のお昼」
「明日! いいわね。わかった。」
「じゃあ、それじゃ。」(明日も会うような雰囲気を残して)

ああ、いいな。

今の私の夕方5時は、大体その日のほとんどの用事が終わり、夕食を準備しながら音声中心のメディア時間(耳やさしい時間)を楽しみに、ほっとしているところですが、この会話を聞いて、自然と笑みをこぼしながら家まで歩きました。

行ったことのある国のことを思い出す恋慕は、素晴らしい気持ち。

行ったことのない国のことを知ろうとする情熱も、また素晴らしい。

自分の思い出の引き出しに前者もあれこれ詰まっていますが、それはまたの機会に。

今日は後者の食の思い出話で、いくつになっても心に広い世界を持っておく提案です。

ここからは、現地で確かめたことのない「アジアの異国情緒」に母と一緒にチャレンジした過去の記録の再編集です。

 

葉っぱの上で自由演技

皆さんは「ミールス」という南インドの手食料理をご存じですか。

主に南インドで食べられている、菜食料理を中心とした定食のこと。「定食」というと日本式の肉魚とご飯、みそ汁のようなものを想像してしまいますが、私は言い換えて「葉っぱの上の手食のごちそう」と表現してみます。

インドだけでなく、マレーシアやインドネシアのバリなど東南アジア諸国の料理でも葉っぱを使った料理が見られますが、外で食べるのはなかなか敷居が高く、以前からちょっと憧れでした。

ルールやマナーも分からないままですが、今回はそんなミールスをいかに現物に近づけるかではなく、蒸し暑くなる初夏になると、アジアの料理が恋しくなり、食材を買い求めて研究していた「ココナッツライス」をいかに美味しく食べるかの追求。

そして、ぎこちない手つきで手で食べる「手食」にもチャレンジした、ある日の葉っぱの上の晩ごはんです。

こんなふうに自由演技で、組み合わせも食べ方も形式度外視なので、予めご了承を。


私の創作

☆バスマティ米のココナッツライス

☆自家製ココナッツ、ガーリック、海苔ふりかけ、レッドペッパー
「のり玉」に見えるが市販ではない、ココナッツシュレッドと海苔塩のミックス

☆皮付煎りピーナツ

☆揚げたひよこ豆のスナック
インド「Haldiram’s」製ナムキーン(スナック)「チャナチュール」。見た目以上に辛い。

☆誰かのお土産ピクルス

実家の母がこしらえた惣菜のあり合わせ

★我が家風のマヨ卵サラダ(上記の海苔ふりかけを少し加えて)

★普通のひじき煮

★ポテト炒め
インド風”を試み、クミン入りで「アルージーラ」をこさえてくれたのだそう。

香ばしく炒めたココナッツ入りで単品でも美味しいバスマティライスをメインに「個人的に欠かせない」と思ったものを(と言っても、ほとんどがトッピング、おつまみの類ですが)集めました。

和印折衷、どんな風味が生まれるやらと思いましたが、食べ慣れた和惣菜に少しスパイスをきかせたお陰で全体の味のバランスが良く、肉もなければカレーやチャパティもなかったのに満足。みんなで「おいしかった」と満足したので、葉っぱの上のごちそうの初回は「めでたし」としましょう。

それよりもおいしく残ったのは、「葉っぱの上で自由演技」というフレーズの妙な後味。
作ってからしばらく経ち、後味も薄れてきた今も余韻が続くフレーズで、我ながら感心中。

れっきとした「ミールス」に必要な要素を揃えるのもいつかやってみようと思いながら、せっかく「自由演技」と言ったからには、これからも自由に楽しんでみるのもありかも。
これは正統派のお店では絶対に出てこない、唯一無二なるおいしい妙味だから。

最近、旅の経験値が少ないなと自覚している方も、こんなライトな感じで、生活の中に世界をどうぞ。その先も興味が湧いたら、行ったことのない国のことを知ろうとする情熱を。

Text / Anna Koshizuka

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