山本莉会

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No.5

本当においしいトムヤムクンを食べる機会は、人生においてそうない。トムヤムクンはどこで食べても大体おいしい。私の運がいいだけなのか、トムヤムクンが元々持っているポテンシャルなのかわからないが、まずいトムヤムクンを食べたことがない。しかし、スー...
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身の丈に合わない高級なパック

高級なパックをもらった。テレビCMで見たことのある、誰もが知ってるような有名なパックで、調べると1枚あたり二千円近くすることがわかり愕然とした。普段家からほとんど出ない私には、1枚あたり二千円のパックを使って出かける先がない。1枚あたり二千...
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私は、差別するあなたを否定できない

差別が止まらない。いろんな人がいる。だから、いろんな考えがあるし、対立する意見もある。守りたい何かは人によって異なり、大切であればあるほど傷つけられたくないと願う。防御のために攻撃し、誰かに牙を剥くことがそのコミュニティにおいて正義になる瞬...
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すべての別れ話にはMCが必要だ

他人の恋愛は楽しい。その真理に気づいているのは私だけじゃないはずだ。じれったい恋愛の相談話に身悶えし、相手の発言の意味の裏の裏の裏をかいて、どうすれば交際に至れるのかを一緒に考える。そこに自分を介在させず、一つの傷もつくらないで参加できるの...
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味の深みがわからない

味覚がわからない。正確には、「味」に関する表現が理解できない。まがりなりにも文章を書いて暮らしているくせにそんなことすらわからないのか、仕事やめろと誰かから叱られそうで今まで言ってこなかったのだけど、本当はまるでわかっていない。「まったりと...
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私たちをつなぐ黒い糸

時々、無性に孤独な気持ちになることがある。言いたいことがうまく伝わらなかったとき。みんなが何事もなく後ろに流した一瞬の感情を、自分だけが最後まで手放せなかった日。大きな歯車の中に入れられて、自分の意思や意見を求められることなく進んでいるなと...
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私を忘れられないNくんについて

誰しも忘れられない人がいる。大学を卒業し3年経ったある日、携帯に知らないメアドからメールが届いた。身構えつつ開封すると、大学時代の同じゼミ生のNくんだった。「元気? Nやけど覚えてる?」。正直、Nくんのことはあまり記憶になかった。いつも古着...
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私が失った何かの話

蛇口を捻ると思うことがある。まだ水道がない頃は、きっと川まで水を汲みに行っていたのだ。近くならいざ知らず、片道数十分かけて汲んでいた家もあったに違いない。その仕事はもしかすると子どもが担っていたのかもしれない。道すがら同じように水甕を持つ友...
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私を救った上沼恵美子

みんながどんどん先へ行き、置き去りになっている気分になることがある。二人目の育休中だった。今となっては昔の話だけど、私の育児期間は「赤ちゃんとの幸せなひととき」とは程遠い、ひどいものだった。親元が遠く、頼れる相手も近くにいなかった。上の子の...