通夜の日に泊まり込んで

祖母の通夜があって、地元岡山に帰っていました。亡くなったのは母方の祖母。97歳でした。大往生。ただ、晩年は認知症が進行し、施設で6〜7年過ごしていました。 

故人となった祖母が眠る葬儀会館の広い控室に、私と母、おばの3人で川の字に布団を敷いて宿泊することに。

通夜の後、故人に夜通し付き添う「夜伽(よとぎ)」という風習があります。翌朝までお香とろうそくを絶やさず故人に寄り添うというもの。

葬儀会館に泊まったのは、夜伽をしなければと意識したわけではありません。そういう決まりがあるわけでもありません。

美作市という岡山市街から50km以上離れた県北で儀式を執り行うこともあり、岡山市内に住む母、関東から駆けつけたおば、福岡から来た私の3人は、現地に宿泊する方が、翌朝の葬儀・告別式にスムーズに出られるという理由でした。

「通夜だから」という理由で、電気を消さずに明々とした状態で就寝。ただ、それだと眠りにつけなさそうなので、私はタオルを目の上に置いて眠りました。

おそらく23時過ぎにはすとんと寝落ちて、翌6時半くらいには目覚めて、うつらうつらと二度寝をしていました。

夜伽なるものを経験したのは初めてでしたが、自分はどこでも眠れるんだなあとびっくりもしました。いや、振り返ってみれば、そんなことはないです。

旅先で巨大ないびきをゴーゴーかく人の隣で一睡もできそうになくて、夜中に布団を隣の部屋へ移動したことが過去にありました。部屋がつながっているので、あまり意味がなかったですが……。

この日眠れたのは、穏やかな寝顔をした祖母が見守ってくれていたからかもしれません。子どもの頃、祖母の家へ遊びに行ったとき、添い寝してもらったこともあります。

祖母がいびきをかいていたかどうかは覚えていませんが、作ってくれる料理が本当に美味しかったのは記憶に鮮明に残っています。

最後に食べたのは10年以上前になるでしょうか。祖母の料理の腕、レパートリーの多さには到底敵いませんが、同じく料理上手な母のおかげもあり、料理を工夫するのは好きな私です。

幼い頃、舌も目も楽しませてくれた祖母の料理。美味しいものばかり、ごちそうさま。いつも歓迎してくれてありがとう。

あっちの世界では自分自身のために、好きな料理を作って楽しんでください。昨日みたいに綺麗にメイクもしてね。いつかまた笑顔で会いましょう。 

Text / Sonoko Ikeda