身体のケアをするにあたって、手ほど優れた道具はないと思っています。これまでいろいろなボディケアアイテムを買ってきましたが、次第に使わなくなるものも多く、手でのケアに落ち着くのでした。
たとえば頭皮のケア。頭皮マッサージブラシを持っていたこともありますが、それを頭皮に当てて動かすよりも、指の腹を頭皮に押し当てて大きく回す方が心地よい。
頭皮の動き幅が圧倒的に大きくなり、頭全体の血流が良くなるのを感じられるんです。鏡を見ながらやると表情筋までも動くのがわかります。
入浴時に身体を洗うのもスポンジやタオルを使わず、手を使っています(浴室に置くものを少なくできるメリットも)。泡立てネットで作った石鹸のホイップを全身へまとわせるだけです。
背中を洗うために背後に手を回す動きは、肩や腕の可動域を広げる動作にもなります。汗が溜まりやすい足指の間には手指を差し込んで余計なものを落とします。
しばらく洗っていない、匂いが熟成したような(=くさい)スニーカーなんかを履くと、足にくさい匂いが移ってしまって、足指の隙間からとんでもない匂いを発するらしい(パートナー談です。私は自分の足指の匂いを嗅ごうとはしないので知りません)。
身体全体を手のひらや指で撫でるようになぞっていくと、肌のトラブルや肉がついている部位にも気づきやすくなります。手のひらや指にはとても優れたセンサーがあるんです。詳しく知りたい方には山口創さんの『手の治癒力』をおすすめします。
脚のむくみや腕の疲れをとるマッサージをするときも手の出番。脚は表面に凸凹のあるローラー棒を使っていた時期もありましたが、手で事足ります。
手をグーにしてできる4指の第二関節を使って、ふくらはぎの骨のキワや太ももの内側と外側を流すと、ギャッと叫びたくなるほど痛いですがクセになりますよ。
腕のケアでは親指が活躍。腕は一の腕(前腕)だと肘の付け根近くにある小指側の筋肉が疲れているので、肘下を手のひらでガシッと固定し、親指でぐりぐりとほぐします。
二の腕も肩の疲れと関係しているので、上腕三頭筋を掴んで親指で圧をかける。これが痛くてたまりませんが、肩の筋肉をゆるめるのに有効なので毎日続けています。
私が主宰する腕〜肩までケアする「一の腕サロン」でお客さまを施術する際も親指はフル出場状態です。
顔周りのケアでも手が大活躍します。流行したローラー状の顔マッサージ機やかっさなどを持っていたこともありますが、今は手しか使っていません。指の第二関節や手根はシワを伸ばしたり、顔の骨に圧をかけたりするのに適した形状です。
顔の血流を良くする目的で、首やワキを揉んだり、鎖骨を動かしたりしたいときは指が使えます。
『胸鎖乳突筋をもめば、一瞬で顔が若返る』(高橋書店、2022年)の執筆協力をしたとき、著者の阿部恵子・由美(アベシスター)さんも、手による刺激が筋肉の深層部まで最もアプローチしやすいと話しておられました。
道具に頼ると手と身体との間にワンクッション入り、手の力が直接伝わりにくくなるのは確か。だからオールハンドの施術って本当に気持ちがいいです。
私が1〜2ヶ月に一度通う香川県高松市の整体サロン「RYUGI」のセラピスト、橋口誠さんからは指による刺激の強さを聞いたことがあります。
手根を身体に当てて力を加えると「面」で圧をかけることになるけれど、指で身体をぐっと押すと「尖ったヒール部分」で圧をかけるようなイメージだと。刺激の強さが異なってくるわけです。
手根も十分気持ちいいですが、指だとより深い刺激が入ります。手の偉大さに感謝する日々、どんなに使っても健やかでいてくれる手指を感じるだけで、にこにこ・幸せな気持ちになる私です。
Text / Sonoko Ikeda