ひとりだけどファミリーサイズの冷蔵庫がいい

2016年1月、円満離婚しました。財産分与も慰謝料もなし。

子どもがいなくて、自分は自営業、夫は経営者でふたりとも稼ぎはあったので、各々の荷物を持って新たな住まいへ移ればいいだけという、かろやかな離婚。 

ただ、今となっては「無理でしょ」の一言ですが、元夫の心が完全に離れていたにも関わらず、私が未練たらたらでなんとか仲良く戻れないか必死だったもので、離婚する2ヶ月前に一時的な別居を提案しました。

(結局、その2ヶ月後に関係修復は不可能と判断して離婚し、気に入った新居で2年暮らしました)

そのときに家具家電を分けたのですが、冷蔵庫だけはどうしても欲しい代物でした。他の家具家電は使うならすべてどうぞ。でも、ハイアールのファミリーサイズの冷蔵庫だけは私が持っていきたいと伝えました。

元夫はすんなり「いいよ」と言ったので、305Lとひとり暮らしには大きいサイズのそれと共に三軒茶屋から新富町へと引っ越しました。

ひとり分だと100L前後の冷蔵庫が平均的らしく、300L超はなかなか大きいです。家に遊びに来た人が冷蔵庫を見て「冷蔵庫が妙に大きい! 何人暮らしなの?」と笑っていたことがあります。

ただ、冷蔵庫が大きくて困ったことは一度もありません。作ったものを鍋ごとしまえるし(鍋ごと入れておくと温めるときも簡単)、食材をどっさり買い込んだときもどうにか収納できるし、突発的に何かいただきものがあっても、大体なんとかなるんです。

気が向いたときに限りますが、2021年に作り置き料理をするようになったときにも、冷蔵庫が大きくて良かったと感じました。 

青果店に行くと1週間分くらいの野菜や果物を買い込むため、冷蔵庫の収納量が増えてしまうのですが、それらを調理すると今度はガラス製のタッパーに入れてスタッキングすることになります。

いずれにせよ冷蔵庫の収納スペースが必要です。小さな冷蔵庫だと難しいこともあります。

福岡に引っ越す前、結婚時から数えて9年使ったハイアールの冷蔵庫は欲しいと言ってくれた家族に譲ってお別れしました。

新たに買ったのは三菱電機のCXシリーズで330Lのもの。野菜室を備えた冷蔵庫は初めてで、野菜が長持ちしやすいことに今さらながら驚嘆しました。

運転音の小ささにも感動でした。キッチンと寝室が別の部屋になる物件に長く住んでいましたが、福岡ではワンルームです。

キッチンとベッドが同じ空間にあるわけで、もし音がうるさかったらどうしよう……と考えたこともありました。

幸いなことに杞憂に終わった、というより、今どきの冷蔵庫は古めかしいホテルに置いてあるような、ブンブン唸る冷蔵庫のような代物ではないのでしょう(私の頭が一番古かった!)。

ほんとのところは、もう少し小さい冷蔵庫にしようかと検討したこともありました。モノを減らしたし、これまでよりコンパクトな部屋に住むし、それに合わせたサイズにしようかなと、迷った時期があったんです。

悩んだ末「大は小を兼ねる、じゃないの?」と言い聞かせ、大きいものを選びました。それは正解な選択でした。

結果的に、自分のライフスタイルには大きな冷蔵庫が合っていました。まとめ買い、気まぐれに作り置き、友人が家に来て食事をすることもある……そんな生活だと、小さい冷蔵庫では「しまえない」ストレスが溜まっていたはずです。

大きくてもぎゅうぎゅうに詰め込む必要はありません。奥まで見渡せて、手を伸ばせるくらいのすっきりした空間を保っているときが多いです。

食べることが大好きな自分にとって、自ら主体的に選んだ食材や作った料理の収められた冷蔵庫を開ける度にうれしくなります。幸せだなあ、と感じます。 

私の身体を作る手伝いをしてくれてありがとう、という思いを持ってやさしく開閉し、掃除もしながら大事に使っている冷蔵庫は「宝箱」です。

Text / Sonoko Ikeda