「大人にあだ名付け」のススメ

「いのっち! あだ名、いのっちはどうですか?」

最近話題の方ではありません。井上さんという友人に「いのっち」というあだ名を提案したときのやりとりです(以下、いのっち)。

いのっちは私を下の名前で「そのこさん」と呼んでくれていました。一方で、私はいのっちのことを名字+さん付けで呼んでいました。

下の名前で呼ばれることは好きです。仕事では会社のメンバーやごく親しい人は「そのこさん」と呼んでくれますが、たいていは「いけださん」。

名字よりも名前の方が気に入っているので、名前で呼ばれるほうがうれしいのです。そんな前提がある上で話を続けます。

いのっちに対し、私ももっと親しみを込めて呼びたいなあ、と思いつつも、「ずいぶん年上の方だし、下の名前にさん付けは馴れ馴れしいし、奥様の呼び方を奪ってしまうことになりそう」。

なんてことを考えていると、呼び名変更提案がなかなかできなかったのです。

しかし、先日お会いしたとき、場が温まったタイミングで、私は切り出しました。「どうお呼びすればいいですか?」と短刀直球に。

そして、自分は下の名前で呼んでいただいてうれしいこと、でもこちらは下の名前では呼びづらい理由があること、その代わりに少年少女時代のようにあだ名を付けるのはどうか、と提案したのでした。

いのっちは笑顔で快諾してくれたので、「いのさん? いのちゃん? うーん、なんか違う……。いのっち! いのっちはどうですか?」と行き着いたのでした。

即決定。その後、いのっちと呼んでいます。

こんな感じで、あだ名呼びに移行する人がときどきいます。こちらもわりと年上の方でしたが、下の名前の一部を使って「◯◯たん」と呼んでいました。

私はこの方から「そのこちゃん」と呼ばれていました。

大人になると、親しくなっているのにずっと名字呼びだったり、丁寧語を崩さずにいたりと、ちょっと肩の力が抜けないなあというときがあります。

そんなときこそ、ラフなあだ名提案をしてみてもいいのかもしれません。それが高いハードルなら下の名前+さん付けで呼んでみる。同性ならしやすいと思います。

せっかく仲良くなった人だからこそ、リラックスしたやりとりをしたい。そう思ってやっている取り組みのひとつです。

Text / Sonoko Ikeda