「あの検察官、ねちっこかったな」。福岡地方裁判所を後にして、友人がそんな感想を漏らしました。
そう、裁判傍聴です。友人に誘われ、裁判を傍聴する目的で福岡地裁へ行ってきました。
今回は裁判傍聴に興味がある方向けに、裁判傍聴のちょっとした小ネタをお届けします。
福岡地裁へ
福岡地裁は地下鉄七隈線沿線・六本松駅前の便利な立地にあり、2018年に新庁舎が完成したことからとてもきれいです。
福岡に越して間もない2022年4月、暇な日に近隣探索を兼ねて、ひとりで傍聴に行ったことがあります。
当時は法廷に入る前に(「3月15日」を過ぎていたのに、かつ一言も喋らないのに)マスクを強要されましたが、今回はさすがにマスクは自由。何も言われませんでした。
10時か13時の開廷を目指して行くのが良さそう
私たちが福岡地裁に入ったのは12時半頃。手荷物検査を受けた後、正面玄関から右手側の壁際に、当日行われる審理予定をまとめた開廷表ファイルが置いてあります。
これはつまり、当日裁判所に足を運んで初めて、この日何の審理が行われるかが分かる、ということです。
それを知った上でやってきたものの、次回は「来庁時間」を見直す必要があると気づきました。
朝一の審理は10時開始のものが多く、午後一の審理は13時過ぎに開始するものが多いのです。以下にも書いてありますね。
私たちが到着したのは昼過ぎで、地裁の人々もちょうどランチタイムなのでしょう。少し待ち時間が発生しました。10時か13時以降に来るのが良さそうです。
人気(ひとけ)のない民事裁判
13時過ぎに開廷したいくつかの審理を傍聴しに行きました。最初に行ったのは民事裁判。
傍聴人入口から入室したにも関わらず、書記官が駆け寄ってきて「傍聴人の方ですか?」。なぜ分かりきったことを聞くのかと思いましたが、あとでその疑問は解決。
「判決宣告」で5分もかからず終わる内容だったこと、傍聴人がいないことも多い類の民事事件だったことから、「ここに傍聴人……?」と逆に驚かれていたのだと思われます。
あとでひょんなことから会話をすることになった、仕事で裁判所通いをしているというおじさまからも「やっぱり刑事事件の方が(傍聴するには)面白いし、人が集まるからね」との意見もありました。
検察官の「問い」から学ぶこと
昨年ひとりで傍聴したときも刑事事件でしたが、今回も刑事事件を傍聴しました。傍聴人は10人以上いたでしょうか。
事件に関する詳細は当然書きませんが、ここで印象的だったのは、被告人質問をしていた検察官です。
被告人の言葉の曖昧さをシャープにしていく、言い換えると抽象度の高い答えを具体性ある答えへと導いていく質問術ともいえるものでした。
たとえば被告人が「普通に〜」という言い方をすると、「今あなたは“普通に”と言いましたが、それは〜〜ということですか?」と聞き直すような。
これを日常会話ですると、相手は「取り調べを受けている」「追い詰められている」と感じるでしょうが、いち仕事人として他者とやりとりする際に不明瞭な点があれば、理解できるまで質問を重ねるべきだろうと思いました。
そういう点で、法廷での質問の仕方やそれによる答えの引き出し方は、人と接する仕事において大いに役立つようにも感じます。
友人とまた行こうと約束しました。次は10時に地裁到着、正午からランチ、13時に再び傍聴へというスケジュールで臨みたい。
傍聴を終えたあと、感じたことや気づき、それに付随することを喫茶店でお茶しながら話すのを含めて、人や人生を考える知的な時間になるような気がします。
Text / Sonoko Ikeda
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