すれ違うだけの他人であっても

傘をさして幅の狭い道を人とすれ違うとき、互いに傘を斜めに傾けて、通りやすくする動作。

親からマナーとして教わったのか、昔から「そうした方がお互い気持ちいいから」という理由で自然にしていたのか分かりませんが、狭いところを傘同士ですれ違うとき、私は傘を外側に傾けます。

一方で、そうした方がすれ違いやすくなるのを知らないのか、単に気が利かないのか、下向き気味にスマホに熱中していて対向者の存在に気づかないのか、傘をそのまま持って歩いてくる人は少なくありません。

ちょっとした配慮ですが、斜めに傾けるだけで双方がするっとなめらかにすれ違えるのですけどね。

その人は「人生でもう二度と会わない他人」である可能性が高いです。

人生で出会う人、関わりの深浅度合いはそれぞれですが、何らかの形でコミュニケーションする人の数は、1万人という説もあれば3万人という説もあります。

幅をとって「出会う人=1〜3万人/1回の人生」と考えると、国内だけで考えても1億2,000万人の99%近くとは関わる機会がないということ。

すれ違うだけの人は「他人中の他人」ということかもしれませんが、私はお互いに気分よく目的地へ行きたいと考えています。

だから、傘を傾けるくらいのアクションはしたい。手首の角度を変えるだけでできる容易いことです。

誰もが自分にとって最高な日を過ごせたら、争いも辛い事件も起きづらくなるのではないでしょうか。

一人ひとりの良き行いの積み重ねが平和につながります。

Text / Sonoko Ikeda