我が家に猫がやってきた

我が家に猫がやってきました。やってきたといっても、最終的には自分の意志で連れて帰ったのですが。

当方、ペット業界に身を置く者ですが、入社後半年くらいの時に、競合他社を知ることも大事! ということで、メインは冷やかし目的で、夫とともにとあるペットショップに乗り込みました。

行ったのは、家から一番近い繁華街の中に店を構えるペットショップ。小学生のときに少しの間犬を飼っておりましたが(我が家に来たときから治りにくい皮膚の病気で、悲しいことに半年ほどで亡くなってしまいました)、それ以降「ペットを飼う」という発想を持ったことがなく、ペットショップに入った回数も数える程度。

おまけに、ペット業界に足を踏み入れたものの、犬と猫に対するこれといった感情はなく、犬派か猫派かというよくある質問に備えて「犬派(どちらかというと)」という設定にしていたくらいです。

ペットショップ店内には、ずらりと並んだ透明の各ケージに子犬、子猫がずらり。軽く動物臭が漂います。小さくてぬいぐるみみたい。可愛いな。しかしここでの「可愛いな」は、美しい景色を見たときの「綺麗だな」、赤ちゃんを見たときの「可愛いな」といった、一般論的な「可愛いな」です。

そんな中、やたらとこちらを見てアピールをしてくる猫がいます。明らかにこちらを目で追い、ケージのお客さん側のガラス面に沿って往復走りしながら、にゃあにゃあと鳴いているのです。

猫というのは気まぐれで、こちらに興味を持ったりしないんじゃあないの。こんな犬みたいに人懐っこい猫がいるの。その「かまってちゃん」な猫が可愛く、ケージの外側で手を動かして遊んでいたら、店員さんが「抱っこしますか?」と声をかけてくれました。

初めて触る、手のひらに乗るほどの小さな猫。猫というのは素早いから、この手から離したらあっという間に逃げて見つからなくなってしまうんだろうな、と内心思いながら、お腹と腕で抱えるように抱っこしていました。

猫を抱きながら店員さんと話していると、猫が当方の腕を両前足で交互に押してくるではないですか。「ふみふみしていますね、お客様のこと大好きみたいですよ!」と店員さん。

初対面の猫に大好きと思われるとは、電車で居合わせた赤ちゃんが見つめてくるのと同様に、自分にはそういった何かしらの素質があるのかな、と調子に乗った考えを持ちながら、その日はショップを後にしました。

その1週間後、我が家に猫がやってきました。もちろん、1週間前に抱っこした猫です。なぜなのか。それはいたってシンプルな理由で、「忘れられなかったから」。

ペットショップを後にした翌日以降、まだあの仔はお店にいるのかなと、ショップのホームページを何度もリロードしてチェック。ページは消えていない、その都度「あの仔はお店にまだいる」と安堵です。

「いくらちゃん」

「え?」と夫。

「あの仔はいくらちゃんだよ。やっぱりあの仔うちに連れて帰ろうよ」

ペットショップに行ける土曜日までの間、猫が売れてしまうのではないかと、仕事中も帰宅後も気が気ではなく、常にそわそわ。来たる土曜日には開店と同時にお店に行き、その猫を狙っていたらしき別のお客さんとタッチの差で我が家にお迎えすることができました。

犬や猫との出会いは本当に縁だとか運命だと思います。犬猫に対して無関心で、飼う気なんか全くなかった自分が、まさか猫を飼うなんて。

あれから2年半ほど経ちましたが、猫のいる暮らしを楽しんでいます。

お迎え後、猫初心者の猫との生活についてはまた次回に。

Text / poco