75歳と86歳の「最後の恋愛」。それを描いた作品『最後のひと』(松井久子)を読みました。
若いときの私だったら「70代と80代の恋愛なんて……」と引いたかもしれません。
人は未知のことや想像できないことに対しては、心を閉ざしたり嫌悪感を抱いたりすることがあるからです。
しかし中年に差し掛かった今は、「いいものだなあ」と感じたのでした。高齢になった自分はイメージできなくても、老いに追いかけられていることは実感しています。
本書では主人公たちは「この人が、自分の人生における恋愛・性愛の総仕上げの相手である」と認識しています。
また、互いに「ぴったりな人」だと思える状態でもあります。それは幸福以外の何物でもないでしょう。
恋愛そのものはとても穏やかで、その世代だからこそ工夫して楽しむことも多々あります。クリエイティブな要素が自然と入ってくるのです。
私がその世代になって、恋愛に対してどんなマインドでいるかは分かりません。
パートナーと離別・死別しているかもしれませんし、そもそも私がこの世にいないかもしれません。
ただ、自分の気持ちに素直に行動する人でありたいと思っています。
Text / Sonoko Ikeda