「これは、こういう意味ですか?」「これは、こういう理解で合っていますか?」
そう聞かれて即答できないことを他人に依頼するのは無責任だと思うのです。
言い換えると、「自分ごと」にしていないから、曖昧なままぶん投げるということ。
「他人事」であれば、自分とは関係ないモードでいられます。
関わる側が「これって、こういうこと?」と尋ねたとき、すぐに答えが返ってこなければ、一瞬で「ああ、この仕事はこの人にとって、あくまで他人事なんだな」と察します。
「中身は精査してないけれど、あとはよろしく」と言ったところでしょうか。
真面目にやっている側としては力が抜けますが、「人に期待してはいけない」の原理原則に立ち返り、なんとかコミュニケーションをとって、漠然としたタスクの具体化・言語化を試みます。
咀嚼されずに投げられた依頼は、不明瞭な要素であふれています。
一人ひとりが違うイメージを持ったまま進んでいく仕事はリスクしかありません。
アウトプットの軸がぶれるとともに、一体何をどう作りたかったのか、誰もが「?」を抱え、誰もが明確な解を持たない状態です。
そんな仕事の進め方は関わる人すべてを幸せにしないことは、過去の経験から十分に分かっています。
一定の社会人経験を積んだ人なら理解しているはずです。それでも繰り返されるのは、振り返りや修正の習慣を持たないからでしょうか。
仕事が人生で一番大切、とはまったく思いません。
でも、なんらかのプロジェクトを通じて生まれる人とのつながりは豊かで、それが人生を楽しくする要素のひとつだから、仕事をするという行為を選択しています。
わざわざ仕事をするなら、幸せな状態でありたいし、役に立ちたいと思っています。自分ごと化するのは、そのためのふるまいです。
Text / Sonoko Ikeda
▼「仕事のスタンス」に関連するエッセイ▼