バスマットはなくても生きていける

これまでいろいろなタイプの「バスマット」を使ってきました。

毛足の長いマイクロファイバーのもの、厚みと適度な硬さのあるいいホテルにあるようなバスマット然としたもの、珪藻土のすぐ乾くもの、などなど。

マイクロファイバーのものはカビが目立たない濃いブラウンで、処分タイミングを見極めづらかったです。

(カビの存在を気にしないで済むことから、使おうと思えば半永久的に使えたかもしれません)

厚みのあるタオルのようなバスマットはベージュでした。カビが生えているのが分かりやすく、黒い点々が目立ってきてからは切って雑巾代わりにし、モノとしての命をまっとうさせました。

珪藻土のバスマットは流行に乗っかって手を出してみたものの、使わないときにどこかへ立てかけておくのが邪魔で人に譲ることに。

今はバスマットというアイテムを持っていません。東京から福岡へ引っ越すタイミングで処分したのです。

代用するのは、洗濯カゴの上の方にある使い終えたフェイスタオル(タオル研究所、80センチ×34センチ)です。ぎょっとした方もいるかもしれませんが、決して汚いタオルではないと思います。

それは洗面所にかけて1日2回は交換するタオルか、ジムから帰ってきてシャワーを浴びた後に使うタオルかのどちらかで、たいていは使い終わって数時間程度のもの。

濡れて雑菌が繁殖しているとしても、お風呂上がりに2〜3秒足踏みして水気を拭う程度なので、大した問題ではないと考えています。

フェイスタオル兼バスマットは洗濯もしやすいし(清潔を保ちやすい)、かさばらないし、ひとつで数役こなしてくれるので、このやり方は素晴らしいと思っています。

ただ、このアイデアは私が思いついたものではありません。パートナーのやり方を自宅にも取り入れています。

彼はバスマットを持たないどころか、洗濯カゴも持っていません。

洗面所には汚れ物を積み重ねて、一般的な洗濯カゴにおさまるくらいの量になれば、その山を抱えてドラム式洗濯乾燥機に放り込むやり方をとっています。なかなかにワイルド。

彼の家で過ごすとき、お風呂場から出たときは、洗面所に積まれた汚れ物を足で引っ張ってきて、バスマット代わりに使っています。

そのときフェイスタオルやバスタオルがあればそれらを、ちょうど洗濯中でタオル類がなければ適当な衣類をバスマット化。

最初はそのやり方が未知なるもので驚きもあったものの、すぐに「合理的でいい」と捉えるようになっていました。

わざわざバスマットを買ったり収納したりする必要もないし、バスマットは毎日洗うものでもない(1日数秒しか使わないから使用後は乾かしつつ、1週間くらい使い続けても死なないでしょと思っていた)ですが、洗う前のタオルや衣類をバスマットというか足裏の水拭いとして使えば、むしろバスマットより清潔なのでは? という考え方もできます。

これは自宅での話。先日は洗濯カゴの上の方に手ごろなフェイスタオルがなかったため、代わりに洗い物の水切りに使う木綿のクロスをバスマット代わりにしました。

キッチンで洗った食器類や鍋を置いて乾かす用の布ですが、お風呂で洗い上げた清潔な足裏で乗るのには何の問題もないでしょう。

どのみち、そのクロスも洗濯するのですから。「なくても生きていけるもの」はあります。代用できるかどうかを考えるのはクリエイティブで楽しいです。

Text / Sonoko Ikeda

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