「パートナーと同じマンションの、同じフロアの、別の部屋に住む」と言うと、「理想的」と羨ましがられる一方で、「一緒に住まないの?」と驚かれることもあります。

確かにそこまで近距離であれば、一緒に住む方が効率面でもコスト面でも優れているのは間違いありません。
ただ、今はあえて、別々の部屋を持っていたいのです。
ここで整理しておきたいのは、「別々に住みたい」と「一緒に住みたくない」はイコールではないこと。
これまで3年間、東京と大阪、福岡と大阪を行き来して、月に10日は彼の家に住んでいました。
本音では「一緒に住みたくない」と思っていたら、この暮らしを続けていないでしょう。
「別々に住む」と「一緒に住む」を両方叶えていた、というのが正確なところです。いいとこ取りをしていたともいえます。
彼と一緒の暮らしは「楽しい」「面白い」というのが、この3年(年の3分の1だけ共同生活をしていた点で、厳密には丸1年にはなりますが)の感想です。
ただ、自分だけの空間もキープしておきたいのです。
新しい暮らしが始まれば、私がチームを代表して自分の部屋で猫を預かります。
互いに部屋の鍵を渡しておき、私の部屋では猫とのふれあいを行い、彼の部屋では夕食や入浴、洗濯をまとめて行います。
猫の面倒を共同で見るのは保護者としては当然で、家事を1ヶ所でまとめるのは時間と資源の節約にもなります。
私が出張などでいないときは、彼に猫のケアを依頼します。
そんな形で、対角線上にあるふたつの部屋を適宜行き来しますが、「おやすみ。また明日ね」と別れて完全にひとりになる場所は、今の私にはまだ必要です。
遅くまでしたい仕事、見たい作品、読みたい本があるとき、同じ居住空間にいる相手のことを気にせずそれらに没頭できる場所。
気兼ねなくストレッチやほぐしなどのセルフケアをする時間。
いつか、大きな一軒家を借りれば、彼と共に住んでもそういった場所や時間は確保できるような気がします。
そのときまで、実験をしながら暮らしていきます。
Text / Sonoko Ikeda