スープであたたかい日々を

2023年最後の月初め、こんな原稿を書きたいと思ったのは、私の毎日が積み重なって1年中考えていることだからでした。

日常茶飯事にも仕事にも、人間関係にもなんだかもう疲れてしまって、季節性の症状にも悩んでいる人。
最近、温かいスープをあまり飲んでいないなという人がいたら……。
とりあえずスープを飲んでほしい。今日はそんな思いをこめてお届けします。

「SOUP FOR ALL」

寒くなる季節、特に寒い環境を歩いているときに、ふと頭に浮かぶこと。

日々の飲食だけでなく、衣食住全般と人間関係において、今の自分が恵まれている「温かさ」について、朝晩と必ず1回は考えています。

そんな思考は今に始まったことではなく、中高生の頃から、駅構内や路上で見かける生活者の様子を見ながら考えていたこと。今も変わっていません。

「私はただの通行人だけど、この人にスープを届けられたらいいのにな。」

育った環境で恵まれている実感はありましたが、自分だって、この先いつ、お金や何らかのトラブルで路上に放り出されて一夜を過ごすかわからない。

実際、20代の海外の思い出の中では、寒い路上に1人で立ち尽くした経験もありました。

このまま立っていたら危ないとヒヤリ、はっとして、心のどこかでいつも、路上生活はすぐ隣、そこにいるのは隣人だと意識してきました。

さて、「SOUP FOR ALL」

思考は世界から日々へ戻し、改めてここに宣言するのですが、このメッセージを強く伝える理由は、コロナ禍から今まで、スープが自分の回復に役立ってくれたものだったからです。

これは私ひとりの着想ではありませんでした。

スープ作家となった有賀薫さん。そのお仕事を始めたきっかけは受験生の息子さんに作ってあげたことだそうです。

ご自身がレシピや書物で伝えているようにスープは「魔法」。

飲んだ人だけがわかる体感知、自然な本能が求める味だと思います。

それからはスープのことばかり考えて暮らした』(吉田篤宏)という小説のタイトルは、15年経っても色褪せていませんが、自分の感覚はもちろん、スープ料理を味わったたくさんの人の声が証明しているようです。

『千と千尋の神隠し』の千尋がおにぎりを食べたときのように、塩むすびもつければもう完璧なご馳走。

このシーンから学べることは、弱ったあなたを「あなた本来」に戻すお手伝いをしてくれるのは、加工品を並べて用意した豪華な食卓ではなく、歴史的にも消費されてきた「シンプルなご馳走」であること。

もちろん、日本式に慣れていないという人なら、出先でパンとサラダを買っていくとき、手軽なインスタントやテイクアウトを自分で持参してもいいですね。

私には冬の欧米、欧州の旅の思い出の中にお気に入りのカフェチェーンがあり、今は遠く離れていても、冬の始めにスープやシチュー、ポリッジ(オートミールのお粥)などの温かい広告やお知らせが届きます。

知恵さえあれば、日本の街角でも、旅先でも、どこでもできる。

コンビニで100円で買えるカップのお味噌汁やスープ。なんでもどんな形でも。

もし今「弱っているな」と感じ、心が動いたら、手軽なスープ類を買ってみてほしい。

脱水したときのポカリのように、いざ不調となったときに助けてくれる回復食になるということは、若い世代にも最低限、身に付けておいてほしい知恵の一つです。

この冬を通して、特に若い皆さんの冷えた心と体に、スープの温もりが届きますように。

ほんの小さな心がけで、いつも家に、カバンに、心にスープを。

コラムの最後にプチ・プロジェクトキックオフのお知らせと自主開催企画のご案内です。

年明けからは、まずは身近な範囲から私主催の「オンラインスープ会」を始めていきたいと思っています。

コロナ禍に大流行したオンライン飲み会、オンラインお茶会と同じスタイルを踏襲。

キッチンから自家製でも、インスタントスープにお湯を入れて秒速でパソコン前に座ってもOKです。遠隔距離でも皆さんとスープと会話を楽しんで温まりたいです。

プロジェクト名は、今のところ「スープで回復プロジェクト」。
この冬もその先も、心と体を温め合いながら、一緒に乗り越えましょう。

#いつも心にご褒美を

Text / Anna Koshizuka

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