30過ぎても学んでる?

新たな環境で生きている。
2024年2月、引越しをした。猫を飼い始めた。

40平米に満たない1LDK。実質広めの1Kだ。
パートナーは同じ階に同じ間取りで住んでいる。

越してきて間もない夕食。外食した焼鳥屋で。
何気ない会話の中でパートナーが言った。
「Taro、猫を飼い始めてどんな学びがあった?」

ドキッとした。学び。仕事では医学を中心に今も学んでいる。
仕事柄、ネットで調べることが当たり前だから、日々アップデートしている気でいたけれど、ふとした環境の変化の中から彼女は学びを得ているのだろう。

かたや自分は仕事がオフのときは風吹くまま。
学ぼうという気がオフなのかもしれない。
猫を名付け、糞尿の世話をして身体を清潔に保つためにお風呂に入れて……。
日々仕事の往復と猫の世話で、日常から学ぶという発想がそもそもなかった。

猫から学ぶこと。
彼女は猫が触られたくないときに発する「ニャー」を聞いて、されたくないことをされたときに意思表示することって大事だよね——そんなことを学んでいたらしい。

猫は気まま。だけれど、飼っている猫はどちらかというと犬気質。
猫の距離感というより犬の距離感だとブリーダーが言っていた。
暖かい場所を探して日向ぼっこをしながら過ごす猫を想像していたが、膝の上にいるコイツは犬感満載。

日中はほとんどの時間をハウスの中で過ごし、たまにハウスから出てきたと思うと人間の膝の上で過ごす。
ニャーということも多いが、ニャーにならない鳴き声に聞こえる「ン~、ン~」と悩ましい声を出したかと思うと、頭を人間様の足に擦り付ける。

猫と一緒に学ぶこと。自分はあまりない。
猫も、犬も、気ままが一番。
せわしなく生きている日常で消費されることの多い社会。
そのなかでいえば、たまに時間の流れ方が悠久の時を経るような、ゆったり、いい意味でぼーっと過ごすことの大事さを学んでいるような。

とりとめのない一見無駄な時間も大事だなと思う。
彼女のように学び、少しずつ変わっていくことも魅力。
感性の深度を深めていくのも脱力系の境地。

大学卒業してから学ばなくなっている国、日本。
最後に本を読んだのは、最後に勉強に身を投じたのは、最後に学ぶ姿勢を発揮したのはいつの頃だっけ。
そう感じた人には学びを勧めてみたい。

座禅を組み、心を落ち着けて、心身を整えたい人。
少しぼーっとする時間を過ごしてみるのもいいと思う。

いずれにしても、心の新陳代謝がいい具合な大人を目指したい。
進化と無。
煩悩を持ちつつこころは解放されている。
矛盾に満ちた自分を生きよう。

Text / Dr.Taro

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