お気に入りはローカルで突然に

「新生活」はカレンダー上でわかりやすい季語や歳時記ではありませんが、入学や入社を控える方々に向けて、業界では2月、3月から準備されているキーワード。

今回、特に伝えたい読み手は、早ければ2月から移転や転職、引っ越しの準備を始めてきた方々。また、今予定している方も含めて、新生活に関連する方々です。

 

新年のコラムに続き、新年度も私の小さなエピソードで「新しい地元」での出逢いでモノとの関係がポジティブに変わった話をお伝えしたいと思います。

 

移動中の手元や枕元で読んできた『さよならは小さい声で』の「お金の使い方」の章で、松浦弥太郎さんがこのように書いていました。

「人というものは常に自分を助けてくれるものを探している。」

 

「買い物をしながらぼんやりなにかいいものないかなあと思うのは、今の自分を助けてくれるものはないかなあという気持ちである。」

「日用品も食べ物も、着るものでも、なんでもそうだ。」

 

まさにその通りと思ってしまったのは、我が家がプリン専門店「マーロウ」で出逢った、プリン以外の意外なお買い得品でした。

「マーロウ」は、神奈川県内の人なら「あのおじさんのマークか」とピンとくる人も多い、横須賀創業、葉山や逗子、東京にも展開する大きなビーカー入りプリン専門店です。

私の家族3人には特に大のプリン好きはいないし、最近までこのブランドに特に愛着があったわけではなかったのですが、休日を兼ねた海街で「マーロウ」を発見して立ち寄ったことで、思いがけない愛用品が生まれてしまいました。

それは名物のビーカーではない、期間限定のプリンを、食べ終わった美濃焼のミニカップ。

これが父の酒器にも、私の茶器やミニスープカップにもずばりハマってしまったのです。

 

私は「季節的に透明感のあるグラスではないな」と思いながらお酒の器を探しつつ、一方で、豆料理をしながら煮汁(スープやだし)を飲むのにちょうどよく、自分の小さな手に収まるスープカップや茶器を探していましたが、オンラインでもピンとくるものがなかったところ。

作家物やブランドでデザイン性があるけれど扱いづらい高価なものか、逆に配送料の方が高くつくという安価なものなど、なかなかの手に届きにくさ。

それよりは値段を問わず、サクッと買って帰れるような「道端買い」が理想だったので、しばらく注文しないでおこうと買うのを見送っていました。

そんな時、母がプリンを最初に見つけて2つ買った翌週に偶然、私も後を追うようにプリンを1つ購入し、結果的に家族3人分の器をゲット。
「これでもう3人で何か飲めるね」と話しています。

「マーロウ」で売られているプリンは800円から1000円前後の高級なプリンですが、中身よりも器のほうが長く使える嬉しいおまけつきの買い物になりました。

 

これが私が最近「あたらしい街のローカルで思いがけずお気に入りが出来てしまった」一連の流れ。

そんなモノとの出会いを「ラブ・ストーリーは突然に」という小田和正さんの歌の題にかけて、「お気に入りは(ローカルで)突然に」というタイトルにしました。

 

買い物を「出逢い」になぞらえた本や記事も多数あり、それぞれの近所で毎日がそんな「出逢いもの」との連続だという方もいるかもしれません。また、日頃から賢いお買い物をしている先輩世代の方々は、私よりもこんな経験が豊富でしょう。

移転・移住、地方就職の経験の多い方も、その分だけ、モノやお店との出逢いが無数に思い当たるのではないでしょうか。

新年度や新生活に備えた引っ越しであたらしい場所に移ったり、はたまた、完全な「移住」ではなくても「あたらしい自分の居場所」を作るなどして「あたらしい近所」ができたという方はモノやお店との偶然の出逢いも新生活の楽しみの一つに加えてほしいと思います。

 

……
さて、新生活を始める若い世代に、私から提案できる1アクションは、昨年度からここで連載してきたフレーズ

#いつも心にご褒美を です。

4月という始まりのタイミングに、改めて私のコラムのコアテーマを書き記しておきたいと思います。

 

自分の心が満たされるということは、お金やモノだけで解決できるものばかりではありません。

いくら満たされている実感があっても〈生きることだけで頑張っている〉自分に何かしてあげられることはないかと、私は毎日「ご褒美探し」をしています。

この思考パターンを得られただけで、だいぶ生きづらさが遠のいた実感のある30代です。

 

私たちは日々の仕事の負荷のみならず、巷のニュースの影響、テクノストレス、家族の出来事など、知らず知らず、いろいろなストレスに晒されています。

そんななか毎日生きているだけで偉いと自分を褒めて、今この瞬間から、何か楽しみになるようなことを作ってみたり、自分にちょっとしたご褒美を送ってみてはいかがでしょうか。

これはSNSでつながる隣人の一人でしかない、私からのメッセージです。

Text / Anna Koshizuka

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