玉袋筋太郎著『美しく枯れる。』を読み終えて

玉袋筋太郎。あまりにも特徴的な芸名だが、魅力が詰まった芸人だ。

言わずと知れた水道橋博士と浅草キッドを組み、漫才師として活躍した。

最近テレビを見なくなり、またテレビが家からなくなって、ライフスタイルが変わった私にとって、活躍した芸人の近況はYouTube動画かXでしか知ることがなくなった。

美しく枯れる。

ある日Xで玉袋筋太郎さんのポストが流れてきて、腰に手を当てビール瓶片手にポーズをとる玉袋さんの写真が表紙のエッセイ本を見て、哀愁を感じつつ独り社会にたたずむ様が心を動かした。

美しく枯れる。』読みたいな。

ネット時代は本当にスピーディーに物事が進む。
Amazonで注文した翌日にはこの本を読める状態に。

目次を見ていくと目を引くタイトルがいくつも。
奥さんが家から出ていった話。
さみしさで押しつぶされそうな日。
同士、いやそれ以上の関係性だった水道橋博士やビートたけしとの関係性が変わっていく話。

瀬戸内寂聴の名作『ひとりでも生きられる』を現代に落とし込んだような普遍的な内容で、40歳を過ぎないと心の奥底で理解できる内容ではないかもしれない。それでも私にとってこの本は名著。

さみしくてさみしくて押しつぶされそうな日。
仲間とさみしさ自慢を肴に酒を飲んだり、ひっそりと一人酒をあおったり、飲みすぎなければ自嘲してでも前を向いて生きていく。
そういうひとりの男の姿は自分にはカッコよく映る。

さみしさが肌にまとわりついているのに気づく瞬間は、人間を何十年もやってりゃあ誰でも経験することだ。

パートナーを過ごしたり、他の何かに没頭したりすると忘れているけれど、死と孤独感は誰にでも訪れる決まりごと。

孤独を飼いならす技術なんか、自己啓発本には必ずと言っていいくらい書いてはある。ただ、読んで実践しようとしても、ぎこちなく不自然になる人間は多い。

行動の中で自分なりの孤独の飼い慣らし方があって、書かれている内容を試してみるのもありだが、最終的には自分に合った孤独との向き合い方に落ち着くような気がしている。

その中でも、簡単に実践できそうなことのひとつ。
他人に優しくふるまう、というくだりがある。
人に優しくすると、返報性の法則で自分に利益が返ってくるというような話ではない。

自分がある人に親身になって尽くしている行為が、その人とつながっている感覚になれる、と言う話。
人は人とつながっていると感じられることが豊かに生きる最高の喜びのひとつ。

そうであるならば人に優しくすることって、自分が生かされていると感じるタイミングでもあって、半径5m以内の幸せが増える豊かに生きるための本質が語られている気がした。

実際に貢献しているか、ではなくて、貢献感を感じながら生きる。
そんなことが感じられる一冊。

Text / Dr.Taro

▼Dr.Taroさんによるコラムを他にも読む▼